研究
2024.8.26
社会的なメッセージをユーモラスに主張 カートゥーンという、1枚の芸術
教員プロフィール
ちょん?いんきょん
1973年韓国ソウル生まれ。芸術博士。淑明女子大学史学科卒業(韓国)。京都精華大学マンガ分野及び现在哪个app能买足彩博士前期?後期課程修了。京都国際マンガ展において銀賞及びグランプリ、日本漫画家協会賞特別賞、日本ジャーナリスト会議黒田清JCJ新人賞、平成19年度京都市芸術新人賞、コバウマンガ賞特別賞(韓国)受賞など。国内外での個展開催、雑誌連載も多数。著書は『コバウおじさんを知っていますか』など。
自分が表現したいことを見つける
社会的なメッセージを含むちょっとしたメッセージを、1枚の絵で、ユーモラスに表現する「カートゥーン(1枚もののマンガ)」は、ファインアートに近い世界観があります。カートゥーンを描く上で大事なのは、そこに込める思いです。もちろん画力も大変大事ですが、いくら画力があっても表現したいことがないと、出てきた絵は空虚なものになります。絵を観るだけで、その人のほぼ全てがわかってしまうのです。
私が、カートゥーンを教える上で重要だと思っているのは、学生一人ひとりとの対話です。「自分が表現したいこと」を見つけてもらうため、気づいてもらうために、色々な質問を投げて、興味を引き出したり、内面にある思いを整えています。
加えて私の研究室では、3年生の1年間は、全ての作品を手描きで制作します。なぜなら、ペンや筆などの画材を手に持って制作することで五感が働き、さらに画力が身につくからです。また、自分で苦労して作った線や色は、他の誰にも真似できない唯一無二の表現でもあります。
自分の中にブレない軸を築く
私は常々、学生たちに、「自分の考えを持ち、世の中に発信することは、怖いことではない」と伝えています。ただ、カートゥーンにはユーモアが必要です。面白いアイデアを考えて、そこにメッセージを込める。自分の中に熟成された思いがなければ、単に軽薄なものになってしまいます。笑いは、なにより難しく、深いものなのです。
そこで重要になってくるのがインプットです。大学では、せっかくの4年間を無駄にしないよう、自ら積極的に学びを取りに行く姿勢を大事にしてほしいと思います。専攻分野に限らず、様々な物事について、見たり、聞いたり、読んだり、触れたり、調べたりして、考える力を身につける。そうして築いた自分の中のブレない1本の軸は、社会に出て迷ったり悩んだりした時に、また、長い人生を生きていく上で、重要な支えになると思います。
外に出て絵を描き、画力を磨く
マンガ学科を目指す人たちには、外に出て絵を描く時間をできるだけ作ってほしいと思います。歩いている人、動いている動物、風景など、いろいろなものを様々な視点や角度で見つめ、ボリューム感や、重さ、質感などを、実際に感じながら描いてほしいです。そうしたトレーニングを重ねていくと、次第に画力が磨かれ、応用力にもつながっていきます。
私も、作品制作は100%手描きです。今でも休日にはカフェでクロッキーをするようにしています。絵描きというのはアスリートに似ていて、継続的に手を動かしておかないと感覚が鈍り、それが如実に絵に現れてしまうからです。嘘はつけません。私の作品を通じてより多くの人にカートゥーンに関心を持ってもらえるよう、そして、私自身の中にもまだまだ自分の殻を破ってみたいという気持ちがありますので、もっといい作品が描けるかもしれないという気持ちを失わずに、これからもチャレンジを続けていきたいと思います。
※所属?職名等は取材時のものです。
世界で注目される日本のマンガを推進する力を育成。
"マンガ"は、日本のコンテンツ産業の中心的存在で、広がりと歴史を持つキャラクター表現です。また、中学?高等学校の学習指導要領(美術)でも扱う対象とされているように、現代の視覚表現としても注目されています。本学科は、マンガをはじめキャラクター表現について、一般の美術系大学にはない専門性と実績を持ち、幅広く人材を育成しています。