研究
2023.4.21
未来を見据え人が暮らしやすい環境をつくる
教員プロフィール
げん?えいれい
同済大学(中国上海市)の建築環境及び設備工程を卒業後、東北大学へ留学。同大学现在哪个app能买足彩?都市建築学専攻?建築環境工学研究室に所属し、修士と博士を取得。その後、名古屋大学现在哪个app能买足彩環境学研究科?博士研究員と助教(分野:都市環境学専攻 建築環境?建築設備工学)として研究?教育活動に従事。
地球温暖化と都市温暖化という2つの温暖化による環境問題の解決策?緩和策を検討することを目的として、人間を取り巻く室内環境から、建物周辺?街区環境、そして都市環境に至る幅広い空間スケールでの温熱?気流シミュレーション研究を行っています。特に、計算科学技術の飛躍的な発展に伴って、コンピュータを活用したシミュレーション研究は、実問題に応じた有効な対策の立案が可能であり、幅広い応用が期待されています。
快適に過ごせる環境をつくる
地球温暖化と都市温暖化が進み、将来的に温熱環境が深刻化する背景の中で、緩和対策を入れたとしても、我々が適応できる環境ができるわけではありません。人間の限界を知ったうえで、適応できる対策を研究し、安全、健康、快適な環境をつくる事を目標に研究しています。
地球温暖化の影響で変化する環境の中で、我々の適応能力はどれぐらいあるか把握できていない部分があります。例えば、暮らしている国や場所により温熱環境に対しての適応能力の違いを考えてみると、日本では夏になると熱中症の患者が増えるのに対し東南アジアの暑い地域で生まれ育った人は熱中症になる確率が低いというデータがあります。データから、生まれた頃から暑い気候の中で生活することで適応できるようになると考えられます。そこで、※人口気候室で東南アジアの暑い地域で暮らす人と日本で暮らす人の温熱環境の生理量を計測し、どのくらい差があるのか調査し、環境緩和対策に役立てる実験や研究もしています。
※人工気候室
人工気候室は、室内の温度と湿度を制御できるだけではなく、48台のファンを個別に回転制御して任意の風速変動?風速分布を作り出すことができます。風速範囲は0.1m/s~2.7m/s、温度範囲は15℃~35℃、湿度範囲は30~90%です。通風時の快適性や覚醒度?知的生産性などの 被験者実験やデシカント空調機(乾燥剤を利用した除湿空調機)の実験などに使用されています。
環境弱者に焦点を当てた研究
現在は、環境弱者と言われる子どもを対象に研究を進めています。子どもは、暑くても意思伝達ができない、暑いのかどうかも分からないことがあり、大人と比べると体温調節能力が低い為、熱中症になるリスクも高くなります。例えば、夏の屋外で日が当たっているアスファルトの表面温度が高くなった時、地面に近いほど地面からの電磁波の影響をうけます。大人と子どもを比べると、同じ空間にいる場合でも体感温度はプラス3度の差があるので、環境緩和対策をする際は子どもが我慢できる温度で考えなくてはなりません。
子どもを対象とした研究を進める中で、日比野設計の方と幼稚園のデザインや、環境づくりのプロジェクトに関わっています。研究データを基に、子どもが長い時間を過ごす幼稚園の中での生活空間、環境、生活プログラムの参考データを提供し、アドバイスを行っています。屋外での活動は、天気だけでなく気温の影響もうけます。そこで、屋外と室内の活動量を計測し、どのような活動プログラムを組めばよいのか考えます。
例えば、屋外活動をするとき、30分ほどかけて歩いて公園に行き遊んで帰ると、公園で遊んでいる子どもの活動量には個人差があります。静かな子もいれば活発な子もいるので、1日の活動量を貯めておくには、幼稚園生活で散歩を取り入れることが効果的なことがデータで、わかりました。そのため、室内で過ごす時間が多い時は、活動量を増やす為、施設に階段を設置する空間デザインの提案をしました。
10年、20年年後の未来に意識を向ける学び
研究室では、学生たちと室内空間、屋外空間、都市空間に存在する温熱環境問題や風環境問題を実測し、実験、環境シミュレーション技術で研究をしています。また、研究結果を基に、快適性だけではなく省エネルギー性を考慮した空調システム運用方法の提案を行っています。これからは、2050年に向けて脱炭素社会が話題になっています。研究室では、数年先ではなく、10年、20年先の気候予測を行い、CO2削減に取り組む脱炭素に向けた環境下で我々は何をすればいいのかを考えています。学生の皆さんには、近い将来ではなく数十年後の未来に意識を持ち、研究をして欲しいと思います。
※所属?職名等は取材時のものです。
学生一人ひとりの興味に応じた専門分野を学び社会で求められる建築のプロを目指す
少人数制の設計製図演習、充実した実験設備、そして教員と学生の距離の近さが最大の魅力。建築関連の基礎知識に加え、得意分野に合った専門知識を学ぶことで、建築の専門家を目指します。「建築」「構造」「環境」の3分野のデザインをバランスよく習得できる点も特徴です。