研究
2022.12.22
脳の仕組みを工学的に理解し、人工知能や効果的な運動トレーニングの開発を目指す
教員プロフィール
かんばら?ひろゆき
東京工業大学工学部情報工学科を卒業後、同现在哪个app能买足彩総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程を修了。博士(工学)。
同大学精密工学研究所助教、同大学科学技術創成研究院助教を経て、2021年4月に東京工芸大学に着任。計算論的神経科学と呼ばれる分野の研究に従事。
目標物に手を伸ばすという単純な運動や、ボールを使ったジャグリングという複雑な運動を研究対象として、脳の運動制御メカニズムの解明を目指した研究を行っている。
運動知能の研究をはじめたきっかけ
私は、小さい頃から体を動かすことが好きでした。体は小さく、走るスピードが速い訳でもありませんでしたが、なぜか運動神経がよいということに疑問を抱くようになり、もしかしたら脳の働きに関係があるのかもしれないということを考え、運動知能の研究に興味を持つようになりました。
体を操る脳の仕組みを工学的に理解することで、人工知能の開発や、効果的な運動トレーニング手法の開発を目指しています。
運動知能研究する3つのテーマ
はじめに運動知能とは、私が考えた言葉なのですが、体を動かす命令を計算するための脳の知的な情報処理のことです。
運動知能研究室では、具体的に3つの大きなテーマに合わせて研究に取り組んでいます。
1つ目は、運動知能を理解するということで、運動中の動作や脳波信号を解析し、体の動きと脳活動の関係性を調べる研究をしています。研究事例としては、※ジャグリング中の脳波信号解析を行っています。ジャグリングは、両手を使いボールを目で追うという非常に複雑な運動で、練習を数か月続けると脳の構造が変わるということがわかっています。脳活動を数値としてデータ化することは、運動知能の謎を解くカギになります。
2つ目は、人工的な運動知能を作るということです。脳が運動指令を作り出すしくみが理解できたら、その仕組みでコンピュータープログラムを作り、仮想身体あるいは人間と同じような形をしたロボットを動かします。そこでロボットが人間のようにスムーズな動きができれば、そのプログラムと同じような計算が脳で行われている可能性があるということがわかります。実験を行いながら人間の※運動学習の特徴を取り入れた、人工知能を開発していきます。
3つ目は、運動知能を高めるという研究です。運動が早く上手くなるトレーニング方法について、※VR技術を利用し開発をしています。研究室では実際にVRを使い、現実空間ではできないような世界でトレーニングをする実験を行っています。例えば、ボールがゆっくり動く環境(月面で)でジャグリングの練習をすると普通の環境よりも早く上達するのではないか、という仮説を立て研究をしています。
以上の3つのテーマに合わせて、学生たちと一緒に実験を行い研究しています。
※ジャグリング???複数の物を空中に投げたり取ったりを繰り返し、常に1つ以上の物が浮いている状態を維持し続ける技術
※運動学習???失敗と成功を繰り返しながら段々と体の動かし方を習得すること。
※VR???バーチャルリアリティの略。コンピューターによって創り出された仮想的な空間などを現実であるかのように疑似体験できる仕組み。
医療に役立つシステムづくりをしていきたい
現在行っている研究を社会に還元するというところでは、効率的にリハビリができるようなトレーニング方法や脊髄損傷などで体が思うように動かせない人が使うアシストスーツなど、医療に役立つ開発です。また、VRを使い、屋外でしかできない運動を部屋の中でもできるようにするシステムを作っていきたいと思っています。そこで、普通に運動するだけではなく脳の仕組みを理解し、早く上達する方法を知ることでリハビリや運動も楽しく継続できるようになるのではないかと考えています。
未だに解明されていない領域の研究
私の研究は脳の機能を理解するという、未だに解明されていない領域です。それを工学的に解明することは大きな意義があります。運動するときの脳の仕組みを工学的に解明することに興味を持ってくれる学生がいたら、ぜひ一緒に楽しみながら研究して欲しいです。
※所属?職名等は取材時のものです。
コンピュータの基礎から最先端の人工知能までを学び将来の選択肢を広げる
コンピュータを自由自在に操り、社会問題を解決できる能力を身につけます。コンピュータの基礎?専門知識の獲得にとどまらず、その知識と技能を活かして、様々な分野へ挑戦していける広い視野と応用力も養います。実習科目に加え、多彩な講義を用意しています。