研究
2025.1.16
ドキュメンタリーを通じ映像でものを伝える面白さを知ってほしい
教員プロフィール
おおしま?あらた
神奈川県藤沢市生まれ。1995年早稲田大学卒業後、フジテレビに入社。「ザ?ノンフィクション」「NONFIX」などのディレクターを務める。1999年同社を退社しフリーに。以後「情熱大陸」「ETV特集」など数多くのドキュメンタリー番組を演出?プロデュース。2009年映像制作会社ネツゲン設立。劇場公開映画も手掛け、主な監督作品に『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020)『国葬の日』(2023)など。プロデュース作品に『ぼけますから、よろしくお願いします。』(2018)『私のはなし 部落のはなし』(2022)など。
かげやま?たかふみ
岡山県生まれ三重県育ち。大学在学中に8ミリフィルムを使って映画を撮りはじめ、卒業後はニューヨークに留学、16ミリフィルムでの短編映画制作などを経験。帰国後は现在哪个app能买足彩に進学し、デジタルシネマについて学びながら何本かの映画を制作。映像に限らず広く「物語」に興味があり、それらを総合芸術と呼ばれる「映画」の形にどう落とし込んでいくかを追求し続けている。早稲田大学现在哪个app能买足彩国際情報通信研究科博士後期課程満期退学。
映像人になったきっかけ
―大島先生は、なぜ映像の世界に進まれたのでしょうか。また、ご自身のこれまでのキャリアの中で、最も印象深い作品とは。
大島教授(以下、大島)
私は子どもの頃、偉人の伝記を読むのが好きでした。高校生、大学生になると、沢木耕太郎さんを入口に、書籍のノンフィクションをたくさん読むようになり、そこから映像のドキュメンタリーにも興味を持つようになりました。影響を受けたのは、89年から放送されていた、フジテレビの『NONFIX』という番組です。若い作り手による野心的なドキュメンタリーを見て、私もこういうことをやれたらいいなと。当時の私は人の生き方にすごく興味があったので、今生きている人の伝記を映像で作ってみたいと思いました。そういう意味では、子どもの頃の自分につながっているのかもしれません。これはやってみて思ったことですが、活字と映像は似ているけれど違う部分がたくさんあります。映像は、活字ほど自由で詳細な表現はできませんが、一方で、表情とか仕草から見えてくる人柄や人間性など、活字に表せない情報を伝えられるところがあります。そこが映像の面白さであり、強みではないかと思っています。
長くテレビ番組を手がけてきましたが、ここ7、8年は映画に軸足を移していて、代表作と言えるのが、『なぜ君は総理大臣になれないのか』という映画です。立憲民主党の小川淳也さんという政治家の初出馬から17年間を記録したもので、一人の人間をこれほど長く見つめたのは自分自身のキャリアの中でも唯一です。気持ちを込めて作りましたし、被写体の負の部分も含めて描くことができ、ドキュメンタリーらしいパワーのある作品にまとめられたと思います。反響も大きかったです。
―景山先生は、なぜ映像の世界に進まれたのでしょうか。
景山助教(以下、景山)
映画が好きで、映画館に通い詰めて朝から晩まで見ているうちに、自分でも作ってみたいと思うようになりました。どうすればあんなに面白いものが作れるのだろうかと勉強を始め、今に至ります。僕の専門は劇映画ですが、一方で、ドキュメンタリーとも接点があります。過去には、京都の襖絵師の記録映画制作にカメラマンとして参加したり、現在は、现在哪个app能买足彩助成金をいただき、台東区に工房を構える東京銀器の職人の記録映画を制作中です。
ドキュメンタリーは幅広く奥深い
―改めて、ドキュメンタリーとはどういうものなのでしょうか。
大島 ドキュメンタリーは、実際の出来事や人物など、事実について記録し、編集した映像作品です。記録映画とか文化映画と呼ばれるもの、例えば伝統芸能や伝統工芸などを後世に伝えるために映像で記録したものも同じジャンルといえます。ドキュメンタリーは幅が広いです。
ストーリーを作るということでいうと、実は、劇映画のようなフィクションと、ドキュメンタリーのようなノンフィクションの境目は、そんなにありません。ノンフィクションは、題材こそがファクトで、当然事実に制約されるところはありますが、最終的に表現されたものはあくまで作り手の解釈になります。例えば、1時間のテレビ番組を作るのに200時間くらいの映像素材があることはざらで、編集という解釈の行為を経てストーリーになります。撮影も、カメラのポジションによって切り取った事実は違ってきます。その時点で意図があるということです。ドキュメンタリーも、いわゆる完全無欠の事実ではなく、映画なら監督、テレビならディレクターの目を通した事実、あるいは解釈がなされた事実であり、とてもフィクショナルな面があると思います。フィクションもノンフィクションも同じく人にものを伝える表現です。ドキュメンタリーを通じて学べることは、誰にとってもあるだろうと思います。
景山 フィクションでも、個人的な体験からストーリーが生まれたり、こういう人物に興味があるという作り手の思いが主人公に現れてきます。また、作品としていかに形にしていくかは、フィクションであってもノンフィクションであっても重要なポイントです。発想の源は、共通しているように思います。
自身の「好き」「楽しい」を見つけてほしい
-ドキュメンタリー研究室ではどんなことが学べますか。
大島 まずはテレビや映画などいろいろなドキュメンタリー作品を見て、ドキュメンタリーとはどういうものかを知るところからスタートし、その後、企画から取材?撮影?編集の全工程を学びます。3年次は、3~4人のチームで30分前後の作品を1本ずつ制作してもらう機会としています。やってみて見えてくることがあると思うので、その経験を元に、4年次の卒業研究では、より良い作品を作ってくれるといいなと思っています。
景山 撮影や編集の技術は1、2年生で学びますが、研究室の授業の中でも復習します。作品制作では、これまで学んできた機材を使って行うようにしています。
研究を通じて学生たちに伝えたいこととは
大島 まずは映像でものを伝えることの面白さを知ってもらいたいです。また、実際に作ってみて分かること、撮影が面白いとか、編集って楽しいとか、やっぱりフィクションが好きなど、気づきが出てくると思うのです。研究をしていく中で、自分に合っていること、やっていて楽しいことを見つけてほしいと思います。
私自身も、いまだに人が作ったドキュメンタリーを見るのが好きです。「俺、これ好きだな」とすごく思うのです。だから続けていられるのかなと思います。結局のところ、「好きこそものの上手なれ」なのです。やっぱり、自分が楽しいとか好きと思うことを続けるのが、一番良いのではないかと思います。
景山 本学で映像を学ぶメリットは、映像人に必要な「感性」「技術」「専門知識」を、4年間かけてカリキュラムの中でじっくり磨けること、またその間に自分の特性や適正をしっかり見極められることだと思います。
様々な選択肢があるなか、大島先生が本学に来られて、本格的にドキュメンタリーを学べる環境ができたこと、ドキュメンタリー界の第一線で活躍されている方から教えていただけるということを、これからゼミを選ぶ学生たちに知ってもらいたいです。私も大島先生と一緒にこの研究室を運営しながら、記録映画に興味を持つ学生に、教えたり、作る過程を一緒に悩んだりできるといいなと考えています。
※所属?職名等は取材時のものです。
あらゆる映像領域をゼロから広く学ぶ。専門性を磨き、業界をリードする人材になる。
今、身の回りには映像があふれており、感動を与えられたり、感性を刺激されたりしています。その中で「映像で何かを表現したい」「映像の世界で活躍したい」と、映像に興味を持った人がゼロから学び、真の映像人になれる点が本学科の特徴です。映像を多角的に学び、都内屈指の最新設備?機器で映像を制作し、業界をリードできる人材を育てます。